Part.1
デボラ雪原の中心に建てられた小さな雪の都
ゲルダは村と呼ぶには少し大きく、都と呼ぶには少し小さな集落だった。
それでも、大陸のどの村や都よりも長い伝統を維持してきた。
暗黒戦争以降、大陸では多くの王国と勢力が生まれては消えていった。
しかし、ゲルダは雪原の中心で自分達の領域を守り続けた。
雪原の酷寒は、外部の侵入者にとっては厳しい環境だったが、
ここに長く住まう者達にとっては、少し不便と感じる程度でしかなかったのだ。
だが、そんなゲルダにも試練の時が訪れる。
忌まわしき“束縛”の力が、雪原の住人達に手を伸ばそうとしていた。
Part.2
ゲルダの柱、女性住民と超人イーオー
ゲルダの村人は、デボラ雪原が放つ浄化のオーラによって
他の地域に住む人達にはない特性を会得していた。
寒さに強く、雪原を自由に動き回れるという特性は
男性よりも女性の方に強く発現したため、
ゲルダでは女性が中心となって、外部からの襲撃を防いでいた。
その中でも、氷と雪を抱いた特別な女性が代々指導者となっており、
現在は“吹雪の女帝”と呼ばれる超人イーオーが後を継ぎ、ゲルダを守っていた。
長きにわたりゲルダを守っていたイーオーだが、とある悩み事を抱えていた。
絶対に溶けることがないはずの雪原が少しずつ溶けているのだ。
Part.1
氷山と氷の海が広がる神秘の雪原
その極寒の地からは、雪が降る海の絶景が見ることができた。
この場所も古代時代に、とある現象によって消滅の危機に陥っていた。
消滅は免れたものの、以降、降る雪が止むことはなかった。
雪が積もり緑色の大地は凍り付き、一部は欠片となって海へ流れた。
しかし、そんな氷の大地でも、生命が絶えることはなかった。
だからこそ、氷と雪に溢れたこの地には、
生命を守る、特別なオーラが満ちているのだと信じられた。
Part.2
汚染さえ乗り越えた浄化の地
デボラ雪原が外部の力に汚染されたこともあったが、
雪原から流れた浄化のオーラによって、自然と穢れは祓われていた。
雪と氷しかない地であっても、デボラに満ちたそのオーラが、
デボラに生きる者達の希望の光となっていた。
しかし、いつからかデボラの雪が溶け始め、
次第に浄化のオーラも薄れていった。
人々はその事実に不安を覚えるも、
決して挫けることなく、ゲルダの意地を見せつけようと奮起する。
Part.1
”束縛”された者達を拘束する結氷の監獄
イーオーは“束縛”に関する研究に力を注ぎ、
その結果、“束縛”から解放する術に辿りつこうとしていた。
そのため、デイモス教団の兵士や狂信者を捕まえ、
彼らの“束縛”を解き、元の人格に戻そうと試みていた。
だが教団の一員は捕まった瞬間、“束縛”の力の影響により
生気を失い、本能だけが残るモンスターへと変貌してしまうのだった。
イーオーは、自分の選択が村人を危険に晒してしまったと考え
モンスターとなった者達を、とある監獄に収容することを決意した。
Part.2
拘束した者達の脱出
“束縛”の力に関する研究は、現在に至るまで続いていた。
その間に、新たな女神の力を持つ存在が現れたという噂を耳にし
イーオーは『その時』が近づいていることを確信した。
そんな中、村人からデボラ雪原の一部が溶けたという話が出た。
永遠の雪ではなく、緑溢れる大地を望む人々の願いが叶ったのだ。
――だが、イーオーだけが気づいていた。
雪原が持つ浄化のオーラが弱まっていることを……。
束縛の罪人を収容したつらら監獄の封印が弱まっていることを……。
Part.1
浄化のオーラを抱く神秘な泉
ゲルダには特別な口伝が伝わっていた。
雪原を彷徨う者達の前に、神聖な泉が現れるという。
そこは、雪原が抱く浄化のオーラの源流だった。
見た目は海から流れて来た水によって作られた泉だったが、
傷を負った動物や精霊達が近づくと、怪我はすぐに癒えた。
また、泉の周りで歌を歌えば、それを真似するように
この世のものとは思えない美しい歌声が聞こえた。
人々はその場所は木霊が密かに群がる場所、“木霊の泉”と呼んだ。
訪れてみたい者も多かったが、その場所に辿りつける者は、
イーオーを始めとする極小数だけだった。
Part.2
汚染の痕跡で死んでいく泉と精霊達
人々は、浄化のオーラは木霊の泉から溢れるものだと考えていた。
やがて、デボラの雪原の雪が溶けて
つらら監獄の中にいた怪物達が外へと流れ込んできた。
すぐにその騒ぎは収束したが、その過程でゲルダに恐恐とした噂が流れ始めた。
「木霊の泉は穢されてしまった」
「木霊の泉を守っていた精霊が、暴れているらしい…」
その噂を証明するかのように、精霊達が雪原を荒らす様子や
同じ精霊に攻撃され、消滅する精霊の姿が目撃されるようになった。
イーオーはこの事件を解決すべく、原因を探し始めた。