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  • 不思議な塔がそびえたつ雲の上の村
  • 遥か昔――
    生き延びるため、すべてを賭して峡谷を越えた者たちがいた。

    彼らは、雲の彼方にかすむ丘を目指し、険しい道を登り続けた。
    雲間が裂け、光が差し込んだその先で見たことのない異国の風景を目にしたのだ。

    そこにそびえていたのは、巨大な魔法使いの帽子を戴く奇妙な塔。
    そして彼らを迎えたのは、塔と同じ帽子をかぶったひとりの老人だった。

    その老人は、まるで世の理の全てを知っているかのようだった…。
    老人は彼らの境遇に胸を痛め、村に留まることを許可した。
    その助力を得ながら、人々は塔の麓に小さな村を築き、やがてこの地に根を下ろした。

    これが、《デベシス》の始まりだ。
  • 賢者の意義
  • 老人は才能ある子供たちに魔法を教えた。
    彼らがデベシスを導けるほどに成長すると、忽然と姿を消した。

    皆にとって恩人であり師でもあった老人。
    その行方について、人々は世界の果てまで探し続けたが、
    痕跡一つ見つけることは叶わなかった。

    やがて当時の村長は、老人が遺した伝言に従い塔を開放する。
    優れた魔法使いたちが集い、日々を豊かにする魔法の研究に
    力を尽くすようになった。

    時が流れるにつれ、姿を消した老人は、
    人々に啓示を与えた存在として「賢者」と呼ばれるようになる。
    そしてその塔は、敬愛と追憶を込めて、
    「賢者の塔」と名付けられた。

    こうして《デベシス》はこの塔を中心に魔法研究都市として大きく発展し、
    プレイオス大陸はもちろん、シルバリア帝国の一翼を担う存在となった。

  • 人智を超える絶景
  • 人々に「賢者の塔」が広く知れ渡ると、
    魔法使いたちをはじめとした多くの人が《デベシス》へと集った。

    視界を遮る分厚い雲をかき分けて進む道は決して容易ではなかったが、
    その先に待つ絶景への期待が勝り、高揚感を抑えられなかった。

    あの丘に到達したすべての人が眼前に広がる風景に心を奪われた。
  •  
  • 視界の果てまで雲海が広がったその中心に、
    魔法使いの帽子を戴く奇妙な塔が静かにそびえ立っていた。

    その光景は、まるで神々や精霊が祝福の言葉を囁いているかのようで、
    目にした者すべてに、抗いがたい畏敬の念を抱かせる。

    人々はいつしか、この場所を“囁きの丘”と呼ぶようになった。

  • 雲に閉ざされたもう一つの場所
  • 囁きの丘から、塔とは反対の方角に歩みを進めると、
    雲に閉ざされていた景色がゆっくりと姿を表す。

    そこに広がっていたのは、
    鋭い断崖と天を衝く峰々が連なる神秘の峡谷。
    旅の途上に現れたかのような壮麗な景観。

    しかし、風に乗る不気味な声と峰を覆い尽くす巨大な巣が、
    その地に潜む異様さを物語っていた。

    巣の頂にはその影が大地を覆い尽くさんばかりの
    巨大な怪鳥がゆっくりと翼を広げている。
  • 盲目の怪鳥
  • 賢者の塔に集う魔法使いが増えるにつれ、
    未知なる峡谷へ足を踏み入れる者も増えていった。
    彼らは幾度となく目にした巨大な巣の主、
    あの怪鳥が、魔獣であるという事実を突き止める。

    だがその存在は、魔獣という名に反して穏やかものだった。
    人々を脅かすこともなく、虫や木の実を糧とし、
    ほとんどの時を巣で過ごしている。

    ただ一つ特異な点があった。その目に宝石を宿しているということ。
    その宝石の目では人をうまく認識することができないその魔獣を
    人々は「盲目の怪鳥」と揶揄するようになる。

    ところがある日を境に、峡谷から出る様子がなかった怪鳥たちが、
    次々と村へ飛来し、人々を襲う事件が発生した。

    当初は偶発的なものと思われていたが、
    飛来の頻度は日を追うごとに増していく……。

    さらに、“奇妙な夢”にまつわる不穏な噂が村に広まり始め、
    《デベシス》はかつてない混乱と不安に包まれていくのだった。

  • 慈しむ者たちの物語
  • 数多の神の手が触れた美しき生命の星でさえ、
    空を見上げることもなく、風の狭間に生きる者たちがいる。

    彼らは生まれてから死ぬその時まで、光を抱くこともなく、
    それが当たり前の運命なのだと、疑うことすら知らなかった。

    ある時、一柱の神が彼らを見出し、影を払い、外の世界へと導いた。
    初めて光を抱いた彼らは、その奇跡に深く感謝した。

    やがて他の生命と交わりながら未来を描き、
    導き手である神のために、一つの場所を築いた。

    神は人々が知覚できない深き時の狭間に、
    密やかにその地を訪れ静かに散策を楽しんでは、
    また姿を消すのだった。
  • 不思議な夢
  • いつからか、村では同じ夢を見る者が増え始めた。

    その夢には必ず同じ場面が現れる。
    一つは、澄んだ青空の下、色とりどりの花々が咲き誇る美しい場所。
    もう一つは、その地が荒れ果て、雪が降り積もる様子だ。
    この二つの情景が交錯するというもの。

    ある朝、村人が夢の話をすると、次々に同じ場所に関する話をする者が現れた。

    彼らはその見知らぬ地で抱いたそれぞれの感情を語り合った。
    歓喜、郷愁、そして底しれぬ恐怖…誰もが感じた違和感がたしかに残っていた。

    命に別状はない。
    しかし、誰も彼もが同じ夢を見るその異常事態に、
    村では「悪魔の仕業ではないか」という噂が囁かれ始めた。