ボスモンスター

  • アドキーナの古くからの友
    太陽と大地のオーラが混じることで生まれ変わった大地、アドリカ。
    強い力の持ち主以外は留まることすらできなかったが、アドキーナにより変化が起きた。
    少しずつ命が芽生え、「普通ではない動物」が住むようになった。
    幻獣と呼ばれる、幻影の動物達だ。
    彼らの心臓は鼓動は聞こえず、呼吸も体温の暖かさもないが、確かに生きていた。
    自分が認める者には全身で感情を表現し、力を与えた。

    アドキーナはその中でも自分と似た立場の幻獣を気に入っていた。
    彼は何もなかった大地で生まれ、最後までそこを守るという決意を持っていた。
    アドキーナはいつか共にジエンディアに行くことを願い、「キリエ」という名前をプレゼントした。
    そうしてキリエは幻影の大地で他の幻獣を導き、アドキーナの友として長い時間を共に過ごした。

    デイモス教団によって幻影の大地が荒らされてしまった時も、
    幻獣達の遺骸を集め、竜の谷に向かう時も、キリエはいつもアドキーナと一緒だった。

    そんなある日、キリエの目付きが急に変わってしまった。
    共に幻獣達と幻獣の墓を守っていた友、アドキーナの声ももう届かない。
    キリエの鳴き叫ぶ声は滝を揺らし、幻影の大地に木霊した。
  • 歌う幻獣
    いつからか幻影の大地からは温かな歌声が響くようになった。
    人間のものでも、動物のものでもない特別なその歌声は、名もない一匹の幻獣のものだった。
    大地の女神ガイアが目を覚まし、アドキーナの元へ向かうときはその声を目印にしていた。
    角は色とりどりの花で彩られ、背中には大きな翼を持っていた。
    ガイアはこの幻獣を「セクウェンティア」と名付け、とても可愛がった。

    デイモス教団が幻影の大地を襲った時、セクウェンティアにも命の危機が訪れた。
    幸い、その場は竜王アドキーナと幻獣キリエによって助けられたが、
    そのショックからか、それ以降セクウェンティアは歌を歌わなくなってしまった。

    女神ガイアはセクウェンティアの歌声が聴けなくなったことを悲しみ、
    神の木、ラピアで休ませることにした。
    セクウェンテイアは女神と共に力を蓄え、少しずつ歌うようになっていった。
    ガイアは満足して再び眠りにつき、アドキーナも安心し、幻影の大地を見守り始めた。

    もう一度あの歌声を聴くことができる―そのはずだった。
    しかし、かつての温かな歌声が響くことはなかった。
    闇のように暗く、冷たい。セクウェンティアの歌声が幻影の大地に響いた。
  • 闇と死の歌
    女神ガイアが眠る神の木、ラピア。
    神の領域の一部であるその場所は、普通の者には出入りすることも、認知することもできなかった。
    女神からの許可を得た者や、女神と同等の力を持つ者だけが、その立ち入りを許された。

    「ある者」は力を持たないガイアを、名前だけの女神と嗤っていた。
    「彼」は過去の自分には許可されなかった力をかき集め、神の領域に出入りできる存在を作り出した。
    女神にも気づかれないような「ニセモノ」を送り込みながら、自分をここに送り込んだ原初的な存在を憎み、また嗤った。

    神の木、ラピアは、女神が愛する幻獣を真似た「ニセモノ」を何の疑いもなく受け入れた。
    「ニセモノ」の内なる闇の力は、少しずつ神の木を蝕んでいった。
    命が生まれる喜びを唄っていたセクウェンティアの歌声は、
    闇と死に染まった「レクイエム」へとなり果てた。

    レクイエムは神の木を侵食し、幻影の大地を飲み込む準備をし始めた。
    「ある者」が立てた計画通り、この地にいる命を束縛するために……。